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当事者が運営する新しい公共 [新しい公共]

在職中に次男が高熱により重度知的障害になりました。当時(30数年前)は障害者の入所支援施設等殆ど無い状態で、生活費を得る為の職業の継続と家庭での重度障害者養育の両立が困難で、子供を道ずれに命を絶つ者が後を絶たない時代でもありました。

何とかしなければと焦りましたが、とても、独力で解決出来る様な問題ではありませんでした。

その様な折、同じ問題で悩み、既に行動を起こしている親達が居る事を知り、連絡を取りました。入所中の子が成年に達し、緊急に児童施設の退所を迫られている子を抱えた彼等の悩みはより深刻でした。行政任せの他力本願では何時まで待っても解決出来そうも有りません。”先ず当事者である自分達が汗を流し、出来る事から始めよう”と頑張って居りました。

然し、僅かな人数では世間もなかなか認めてくれず、想いを貫徹できる基礎さえ作る訳にも参りませんでした。

其処で、同じ問題に悩む多くの親達が同時に立ち上がれば少しは大きな力になるだろうと、広く県内の親達に呼びかけ、メディアにも訴え続けて参りました。

紆余曲折の末、漸く世間にも同調者が現れ始め、多くの方に認めて頂き、社会福祉法人を立ち上げる事が出来ました。そして、行政や支援団体の援助を戴き、入所施設を開設する迄の運びとなりました。

子供達は其処で支援を受けながら日々を送り、親達は正業に励み、積極的に施設を支え護って行く事に致しました。

今は特別支援学校高等部迄は公立の制度が整っていますが、卒業後の重い知的障害者達は社会に放置された侭です。生涯を通し一貫して支援の受けられる生活の場等殆ど見当りません。

少子高齢社会を迎え、社会保障費は毎年1兆円以上の規模で増加を続け、此の国の財政は瀕死の状況です。例え消費税を10%位増やし、社会保障費に充てた処で、この問題まで解決出来る状況では有りません。此の様な状況下、保護者を亡くした知的障害者のホ-ムレス化は進み累積犯罪者も増加しています。在宅の障害者でも保護者の不慮の死で共に命を落とす者も発生し社会問題となって居ります。

然し、現状では此の国の財政をどの様に分析しても、之等を解消する予算を特別に組み込む余地など見出せません。障害年金の範囲内で保護者若しくは後見人が考え、努力し解決して行くしか方法が見当りません。

重度の知的障害者を扶養する保護者又は後見人は、自分達の死後に残された障害者本人の将来を考えると不安でなりません。重い障害を背負った者達が「親亡き後」も恙無く人生を全う出来る仕組を自分達が生きて働ける内に用意し残して置かなくてはなりません。当然、本人の障害年金だけでは足りません。保護者達の自助、或いは新しい公共の仕組みを有効に活用する事を真剣に考え行動に移して行かなければなりません。

身内に知的障害者を抱える当事者が立ち上げ運営に携わる法人として、私達は此れ等の問題と正面から取り組んで参りました。

特別支援学校卒業後の重度障害者向けに2ヵ所の通所支援施設。6ヶ所のケアーホームを備えた1ヵ所の日中支援施設。日中活動の場を備えた入所支援施設。3ユニットに編成された特別養護老人ホーム等を展開しています。特養では身寄りが無くなってしまった利用者向けに終末看取りも試みて居ります。又、其の様な方々の為に墓地も用意しました。近く始める入所支援施設の改修に合わせて、重症心身障害者にも対応出来る設備を整える予定です。之等が完成しますと、念願の「特別支援学校卒業後も生涯を通し支援可能な設備およびシステム」が小規模ながら一応は整う予定です。

一方、、「親亡き後」に残された知的障害者達に起る諸問題を案じつつ、独り先立つ親の気持ちを慮い、平成12年の民法改正(法人成年後見人制度)に合わせ、利用者の親達に依って成年後見のNPO法人を立ち上げ運営致しております。保護者である親や兄弟姉妹亡き後にも安心して引き続きNPO法人の後見を受けながら生涯を全う出来る様に、法人(理事を次世代に交代し引き継ぐ事で成年後見の継続が可能になる)及び複数後見人(親や兄弟と法人が同時に複数後見人となる)制度を活用した支援活動を続けて居ります。

後僅かで「生涯を通し、物心両面に亘り継続して支援の受けられる重度知的障害者の生活環境」が一応は整う予定です。皆様の温かいお力添えあればこそ、何とか此処まで到達する事が出来ました。之からも変わらずご支援のほどよろしくお願い致します。
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コメント 3

nano

過去記事で気付くのが遅れましたが
訪問nice!ありがとうございますm(__)m
by nano (2012-04-30 22:45) 

ryuyokaonhachioj

おはようございます。
訪問&nice!ありがとうございます。
by ryuyokaonhachioj (2012-05-01 05:05) 

MADONNA

障害者が働けるようになったら「障害者年金を削ろう・・」という考えの方が学識者の中にはいらっしゃる・・と聞きました。
恐ろしいことだと思います。

子ども達の年金だけでは食べていけない どうにかして仕事をして生きられるようにしなくてはいけない。
働けても どれだけの期間 働けるのかもわからない。
将来、どこかの施設に入らなくては生きて行けないのは目に見えている。

でも・・入る施設がどこにもない・・・

施設を解体して 社会の中に人を出す政策が一時期ありましたが、社会に出ても 働けなくなって・・障害度があがって 認知症もでるようになったら・・入るところがどこにもなければ 路上で死んでいきます。
親は 死ぬに死ねない気持ちになります・・・。

by MADONNA (2012-05-27 16:29) 

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